災害時の対応

日本IDDMネットワークは、みえ防災市民会議(元 三重県防災ボランティアコーディネーター養成協議会)及び災害ボランティアネットワーク鈴鹿と災害時の難病患者支援プロジェクトを組み、平成17年度に三重県のNPOからの協働事業提案に採択され、1型糖尿病患者やその家族のみならず、医師、薬剤師、看護師、製薬企業、防災NPO、行政等との協働による日本初の災害対応マニュアルを作成しました。
ここでは、その中からポイントをご紹介しています。詳しくお知りになりたい方は、「1型糖尿病[IDDM]お役立ちマニュアルPart3-災害対応編-」をご参照ください。

インスリン製剤・インスリンポンプについての問い合わせ窓口

お使いのインスリン製剤、インスリン注入デバイス(インスリンポンプ類)についての不具合・故障などの問い合わせ、災害時などの入手方法などは下記リンク先でご紹介している各企業の問い合わせ・相談窓口(WEBサイト)にご連絡ください。

・国内で利用できるインスリン製剤や医療機器など
 https://japan-iddm.net/life-info/medicalcare/mt-now/

大規模災害の基礎知識

・日本全国どこであろうと、大規模災害は起こる可能性があります。
・地震によって注射器が壊れるなど、インスリンを打てなくなる危険もあります。最悪命を失ってしまう可能性もあります。
・病院や薬局も被災するため、被災直後は、糖尿病の治療を受けたりインスリンを処方してもらうことが困難になります。
・医療救護班が避難所等に派遣されますが、ケガの治療や風邪・下痢・ストレスケア等が中心で、糖尿病の治療は近くの医療機関での対応になります。
・災害直後に治療を受けるのは難しいので、1週間程度のインスリンや注射器(ペン型注入器)等をいつでも持ち出せるようにしておくことが大切です。

1型糖尿病の基礎知識- 患者・家族、そして病気を知らない支援者の皆さまへ

・毎日数回のインスリン注射(注入)を生涯にわたって必要とする病気です。
・感染する病気ではありません。
・一見、病気のようには見えませんが、インスリンを注射(注入)しないと数日(早ければ1日)で死に至る病気です。
・食事を規則的にとることが体調管理に重要です。
・低血糖の時は補食が必要です。
・意識を失うような低血糖や高血糖は命にかかわります。意識がない場合は、速やかに医療機関に運んでください。

基礎インスリンの重要性について

このたびの能登半島地震で被災された方々は避難生活の中でのインスリン治療では大変苦労されていることと思います。
ご存知のようにインスリンには「基礎インスリン」(持効型インスリン)と「追加インスリン」(超速効型インスリン)の2種類がありますが、そのうち「基礎インスリン」投与は食事と無関係に(生きるために)必ず必要です。
その重要性について私たちの医療専門アドバイザーである川村智行先生(あべのメディカルクリニック院長)にあらためて解説いただきましたので、是非参考にしてください。


「食事が出来ない状況でも基礎インスリンは絶対必要です!」

(基礎インスリンとは、ランタス、ランタスXR、グラルギン、レベミル、トレシーバのどれかです。)
インスリン、注射針、血糖測定の物品は確保できているでしょうか?
特に食事の面では不自由されておられるのではないかと思います。十分な食事摂取が出来ない時に、インスリンの注射量を減量されている方も多いのではないかと思います。
その際にご注意いただきたいことは、食事が出来ない状況でも基礎インスリンは絶対に必要です。
十分な食事が出来ない状況が続きますと、基礎インスリンだけでも血糖値が下がってしまうことがあります。そのような場合は、70-80%ぐらいまで基礎インスリンも減量が必要なことがありますが、決して中止はしないでください。
インスリンを減らしすぎると、食事しなくても顕著な高血糖(300mg/dL以上)になってしまいます。
そのような場合は超速効インスリン(ヒューマログ、ノボラピッド、アピドラ、リスプロ、フィアスプ、ルムジェブのどれか)を4時間毎に2-4単位を打って200mg/dL以下まで下げましょう。
そのためにも一日数回の血糖測定をして、300mg/dL以上の高血糖や80mg/dL以下の低血糖にならないように注意しましょう。
各避難所や近隣の薬局にインスリンや血糖測定の器具を支給するように手配が進んでおりますので、お問い合わせください。

インスリン療法中の2型糖尿病の被災者の方々への注意喚起
「食事が十分出来ない場合もインスリンが必要なことがあります」

十分な食事が出来ない場合には、インスリンの減量が必要なことが多いです。しかし、被災中の食事は糖質を多く含む食事(おにぎり、パン、インスタント麺、果物など)になりがちですので、高血糖にもなりやすいです。
ですから出来るだけ血糖測定をするようにしてください。
2型糖尿病の方のインスリン療法は患者さん毎に様々ですが、上記の様な糖質の多い食事を食べる場合はインスリンを止めないようにしてください。
量の調整が分からない場合は、下記に御相談ください。
各避難所や近隣の薬局にインスリンや血糖測定の器具を支給するように手配が進んでおりますので、お問い合わせください。


インスリンの調整方法や、血糖値についての御相談は、お気軽に下記にご連絡ください。
あべのメディカルクリニック 川村智行 garurumusashi@gmail.com

大規模災害時に1型糖尿病患者がおかれる状況

・いつもの食事と違うメニューになり、適切な医療が受けられなくなり、重労働を強いられたり、ストレスに襲われたりします。
・食事がとれない、慣れない重労働、インスリンの効き過ぎなどにより低血糖になります。
・いつもより高カロリーな食事、ストレス、インスリン注射(注入)ができないなどにより高血糖になります。

被災したらどうする? -災害時の対処法-

・まず落ち着くことが大切です。
・インスリンや注射(注入)器、お薬手帳、保険証などを持ち出せるようにしておきましょう。
・災害時でも、1週間程度の備蓄があれば、今すぐ焦る必要はありません。
・災害を乗り切るには、「自助7 共助2 公助1」です。
・災害時には血糖が日頃より不安定になって当たり前です。災害時の血糖管理は病気にかかった際の方法(シックデイルール)を思い出しましょう。
・避難所では一人で悩みや不安を抱え込まず、周りに相談できる人を見つけましょう。

『1型糖尿病[IDDM]お役立ちマニュアル Part.3-災害対応編-』
第4章「被災したらどうする?~災害時の対処法~」

※1型糖尿病の方が、被災時にどんなことに気をつければ良いか、医薬品をどうやって都合すれば良いのかを解説しています。

災害に備えて日頃から準備すること

・災害が起こったらどんな状況になるか、イメージを持ちましょう。
・いざという時の薬や器具の備えをしっかりしておきましょう。
・周りの人に1型糖尿病のことを伝え、正しく理解してもらいましょう。
・1型糖尿病の友人をつくりましょう。
・身近なネットワークをつくりましょう。
・支援体制について調べましょう。
・日頃から正しい血糖コントロールを身につけておきましょう。
・自分が1型糖尿病であることを示すものを持ちましょう。

災害時にこれだけは身につけておきたい品目 チェックリスト

最後に災害に備えて2つのチェックリストを作成しました。
万が一の災害に備えて、お役立て下さい。

・インスリン
・お薬手帳、処方せん(コピー)
・保険証
・補食(ブドウ糖、砂糖など)
・穿刺針、穿刺器
・ペン型注入器(注射器)、注射針、ポンプ
・血糖測定器、電極(チップ)、乾電池
・災害時の心得帖(当マニュアル本に掲載の自分用のマニュアル)
・脱脂綿、アルコール
・使用済み針入れ
・1型糖尿病[IDDM]お役立ちマニュアルPart3-災害対応編―
・メモ帳と筆記具(自分の体調を記録しておくため)
・その他(合併症や他の症状で必要な薬や器具)
・モバイルバッテリー

大規模災害時への備え チェックリスト

・災害が起こったらどんな状況になるか、イメージを持っていますか?
・インスリン、その他非常時の持ち出し品の準備は万全ですか?
・「1型糖尿病お役立ちマニュアルPart3-災害対応編」には「災害時の心得帖」が掲載されています。それをいつも持っていますか?
・学校、会社、行政、消防団、看護師、薬剤師等周囲に理解者をつくりましたか?
・1型糖尿病の人で連絡を取りあえる友人や団体がありますか?
・災害時要援護者登録制度等、地域の支援体制について、地元市町村役場で調べてみましたか。
・血糖測定しなくてもだいたいの血糖値が予測できますか?
・家族と連絡が取れなかった時の再会場所について家族で確認できていますか?

関連リンク

災害時おけるIDDM患者の行動・支援指針の事業計画
※この事業は三重県庁の協働事業に採択されております。
この検討結果を踏まえて、1型糖尿病[IDDM]お役立ちマニュアルPart3~災害対応編~を発行いたしました。

大規模災害時等の際の処方せん医薬品等の取扱いについて

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