MODY(Maturity Onset Diabetes of the Young) は、若くして糖尿病を発症する遺伝病です。日本語では「家族性若年糖尿病」「若年発症成人型糖尿病」とよばれます。「成人型(2型のような)糖尿病」という言葉が含まれていますが、遺伝子異常が発症の原因であり、生活習慣が原因ではありません。
こんなことを思ったことはありませんか。
「あの人は僕より不健康な生活をしているのに、なぜ糖尿病にならないんだろう・・・?」
答えは、遺伝子です。
遺伝子は、からだの設計図の役割をしています。
わたしたちの遺伝子のうち、99パーセントが同じですが、残りの1パーセントの違いで個性が生まれています。背の高い人や、背の低い人がいるのと同じで、糖尿病になりやすい人や、なりにくい人がいます。
これまでの研究によると、ヒトの遺伝子のうち300以上の箇所が糖尿病の発症に関係しているとされています。それぞれの遺伝子の影響度は異なり、太りやすい遺伝子など 糖尿病になりやすい小さな要因を多く持った方が、食生活や運動不足による肥満や、タバコ、生活習慣、加齢などが原因で発症するのが2型糖尿病です。(そういう意味では、2型糖尿病も遺伝病といえます。このような遺伝形式を多因子遺伝と呼びます。)
それに対し、インスリンづくりに関係する、「血糖調整にとても大事な遺伝子」が変異して、生活習慣に関係なく発症する糖尿病のなかで頻度の高いものにMODYがあります。
MODYに関係する遺伝子は、これまでに約14種類が判明しており、そのうちHNF-1α(MODY3)、 HNF-4α(MODY1)、 GCK(MODY2)が大部分を占めます。
MODYは ①若年で糖尿病と診断されており(多くが25歳未満)、②GAD抗体などの自己抗体が陰性、③糖尿病の家族歴(少なくとも片親が糖尿病)があり、④肥満ではない(BMIが25 kg/m2未満)方の場合、疑わしい状況となります。
MODYの患者数は、糖尿病全体の1%から3%程度と推測されています(イギリスからの報告)が、十分に認知されていないことから、正確な人数はわかっていません。
若くして発症し、肥満を伴わず、内因性インスリンの分泌低下を認めることから、1型糖尿病と診断され治療されていることも多い病気です。1型糖尿病として50年以上治療されていた方の遺伝子のうち、なんと7.9%がMODYの遺伝子を持っていたとの報告もあります(アメリカのジョスリン糖尿病センターの報告)。
また、若くして2型糖尿病と診断されるため、周囲から受ける差別や偏見も大きな問題となっています。
MODYはSU薬などの血糖降下薬が有効な場合もあります。正しい診断を行うことで、インスリンから経口血糖降下薬へと切り替えができる可能性もあります。近年では遺伝子診断による医療費の抑制効果も注目されています。
診断は血液検査でゲノム解析を行うことです。 2022年1月現在、残念ながら保険収載はされておらず自費での検査となり(実費で5万円前後)、解析が可能な施設も限られている状況です。しかしながら、2020年に日本糖尿病学会では単一遺伝子異常による糖尿病の成因、診断、治療に関する調査研究委員会が発足し、場合によっては検査費用が負担されることもあるようです。もし自分がMODYではないか、という場合は、かかりつけ医にご相談ください。
寄稿:田中 慧(東京女子医科大学 統合医科学研究所)
監修:野見山 崇(国際医療福祉大学医学部 糖尿病・代謝・内分泌内科学 教授)