採用選考時の健康診断について

2002年11月30日
 
採用選考時の健康診断

 「雇入時の健康診断」は、常時使用する労働者を雇入れた際における適性配置、入職後の健康管理に役立てるために実施するものであって、採用選考時に実施することを義務づけたものではなく、また、応募者の採否を決定するために実施するものでもありません。

 労働安全衛生規則(昭和四十七年九月三十日労働省令第三十二号)
第四十三条(雇入時の健康診断)
 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。

  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力をいう。次条第   一項第三号において同じ。)の検査
  4. 胸部エックス線検査
  5. 血圧の測定
  6. 血色素量及び赤血球数の検査(次条第一項第六号において「貧血検査」という。)
  7. 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミ   ックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチ   ダーゼ(γ―GTP)の検査(次条第一項第七号において「肝機能検査」という。)
  8. 血清総コレステロール、高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)及   び血清トリグリセライドの量の検査(次条第一項第八号において「血中脂質検査」とい   う。)
  9. 血糖検査
  10. 尿中の糖及び蛋白の有無の検査(次条第一項第十号において「尿検査」という。)
  11. 心電図検査
〈官公庁や企業「肝炎」で不採用相次ぐ〉
 厚生労働省の中止指導にもかかわらず、採用時の血液検査や健康診断を続ける官公庁や地方自治体、企業が目立ち、肝炎ウイルスなどへの感染を理由に不採用にされたなどの相談が日本肝臓病患者団体協議会(東京)に相次いでいることが三日、分かった。
 B、C型肝炎はエイズと同様、日常生活では感染しないとされ、不採用は誤解が原因。厚労省は「不当な就職差別」としながらも不採用への具体策を打ち出しておらず、協議会は「正しい知識の普及、啓発が遅れている」としている。
 厚労省は昨年四月「就職差別につながる」と、適性や能力の判断に不要な採用時の肝炎ウイルス検査、血液検査や健康診断をやめるよう雇用主に求めた。
 しかし民間企業だけでなく、労働基準監督官や国税専門官など一部の国家公務員、地方公務員の採用試験でも健康診断が続けられている。
 警察官採用試験でB型肝炎ウイルスとHIV(エイズウイルス)の血液検査を継続している警視庁は「犯人逮捕など厳しい警察官の職務を遂行する身体を保持する必要がある」と説明。「発病している人は体力的な面から採用しないが、ウイルスに感染しているだけで不採用にはしない」としている。
 民間企業は健康診断結果を採用基準にしているのが一般的で、同協議会には就職にかかわる相談が多数寄せられている。肝炎に対する産業医の知識不足も背景にあるという。
 具体例としては①B型肝炎ウイルスへの感染を理由に、金融機関や放送局から内定を取り消された②ホームヘルパーを目指す専門学校生がC型肝炎感染のため実習を断られ、資格が取れない③看護師が肝炎感染を理由に病院を解雇された―などの相談があった。
 厚労省雇用開発課は「今はこうした行為への罰則がない。病気による労働者の不当な差別を禁じる人権擁護法案が成立すれば、対策がとれる」としている。
                   (2002年11月04日佐賀新聞掲載記事より)
 
●「採用選考時の健康診断に係る留意事項について」
 平成13年4月24日付け事務連絡
厚生労働省職業安定局雇用開発課長補佐から都道府県労働局職業安定主務課長あて
標記については、平成5年5月10日付け事務連絡「採用選考時の健康診断について」により、公正な採用選考を確立する観点から、普段より各種啓発資料を活用するなど、雇用主に対する啓発・指導を行っているところである。
 今般、別添、健康局総務課長、疾病対策課長、結核感染症課長連名通知「当面のウイルス肝炎対策に係る体制の充実・整備等について」により、「C型肝炎ウイルス等の持続感染者に対する差別は、偏見を基礎にしたものであり、地域や職場においてこれらの偏見を排するよう、正しい知識の普及・周知徹底を図る必要がある」旨述べられている。
 ついては、職業安定機関においても当該通知等にも留意しつつ、今後とも、採用選考時の健康診断については、職務内容との関連においてその必要性を慎重に検討することなく実施することは、結果として就職差別につながるおそれがあり、採用選考時にいわゆる「血液検査」等の健康診断を実施する場合には、健康診断が応募者の適性と能力を判断する上で真に必要かどうか慎重に検討するよう雇用主に対する啓発・指導に取り組まれたい。(以下略)
 
●「採用選考時の健康診断について」
 平成5年5月10日付け事務連絡
労働省職業安定局業務調整課長補佐及び雇用促進室長補佐から各都道府県職業安定主管課長 あて
   近年、新規学校卒業者の採用選考時に、事業主が労働安全衛生規則第43条(雇入時の健康診断)を根拠としていわゆる「血液検査」等の健康診断を一律に実施し、公正な採用選考の観点から問題となっている事例が見受けられるところである。
 しかしながら、同規則は採用選考時の健康診断について規定したものではなく、また、「雇入時の健康診断」は、常時使用する労働者を雇入れた際における適性配置、入職後の健康管理に資するための健康診断であることから、採用選考時に同規則を根拠として採用可否決定のための健康診断を実施することは適切さを欠くものである。
 また、健康診断の必要性を慎重に検討することなく、採用選考時に健康診断を実施することは、応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項を把握する可能性があり、結果として、就職差別につながるおそれがあるところである。
 このため、採用選考時の健康診断の実施については、従来より必要に応じて指導を行ってきたところであるが、今般、労働基準局安全衛生部労働衛生課長から各都道府県労働基準局労働衛生主務課長に対し「雇入時の健康診断」の趣旨の徹底について別紙のとおり通知した旨連絡があったので、各都道府県においても、下記の文例を新規学校卒業者向けの求人説明会の配付資料に盛り込む等、事業主に対して「雇入時の健康診断」の趣旨を十分徹底し、応募者の適性と能力のみに基づく公正な採用選考を行うよう指導されたい。
 
 
 
   近年、新規学校卒業者の採用選考時に、労働安全衛生規則第43条に「雇入時の健康診断」が規定されていることを理由に、いわゆる「血液検査」等の健康診断を一律に実施している事例が見受けられます。
 しかし、この「雇入時の健康診断」は、常時使用する労働者を雇入れた際における適性配置、入職後の健康管理に役立てるために実施するものであって、採用選考時に実施することを義務づけたものではなく、また、応募者の採否を決定するために実施するものでもありません。
 また、健康診断の必要性を慎重に検討することなく、採用選考時に健康診断を実施することは、応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項を把握する可能性があり、結果として、就職差別につながるおそれがあります。
 したがって、採用選考時にいわゆる「血液検査」等の健康診断を実施する場合には、健康診断が応募者の適性と能力を判断する上で真に必要かどうか慎重に検討していただきますようお願いします。