第1回山田和彦賞、山中伸弥京都大学iPS細胞研究所所長へ <賞金1000万円>授与と記念講演を開催

2018年05月27日

山田典子氏(左)、山中伸弥所長(中央)、井上龍夫理事長(右)

2018年5月27日(日)、京都大学iPS細胞胞研究所の講堂にて日本IDDMネットワークは「第1回山田和彦賞授賞式および記念講演」を実施いたしました。

全国各地(東北から九州まで)から約80名の参加があり、山中伸弥所長には表彰状と賞金(1,000万円)が授与され、続けて山中伸弥所長による記念講演が行われました。会場に集まった患者・家族は山中所長の患者・家族に寄り添う姿勢に、うれしさと将来の根治への期待感を溢れさせていました。

【山田和彦賞について】

「山田和彦賞」は日本IDDMネットワークが1型糖尿病患者の故山田和彦様からの遺産寄付(遺贈)を財源として2015年10月に創設しました。山田様は他の人からの移植や機械に頼らず自分の体は自分の体の中で治ることを期待されていました。生前から自分の後に続く若い患者には1型糖尿病の「根治」が実現することを願い、ご自身の財産の一部を当法人に託されたものです。受賞者選考の詳細などはこちらをご参照ください。

「第1回山田和彦賞授賞式および記念講演」 について プレス発表

山中伸弥所長からのお礼と今後への抱負(記念講演)

このたびは、このような患者様の思いがたくさん詰まった賞をいただくことができ、本当にうれしいことです。ありがとうございました。故山田和彦様とお姉さま典子様のお気持ち(ご遺志)に応えるべく、この賞金を有効に活用させていただきます。研究を進めるためにはこのような患者さんたちからのご支援が大きな力になります。

現在のiPS細胞では臓器自体の再生はまだまだ難しいですが、細胞レベルではかなり再生が実現できており、インスリンを作る膵臓の細胞もできるようになってきています。それは「細胞移植」というレベルの「再生医療」に近づいているということです。

自分は「寄付活動」に多くの時間を費やしています。公的なお金や競争的外部資金では研究所の環境改善や若手研究者の教育などには使えません。そのための寄付金集めを自ら活動を行っています。特にマラソンを走って寄付の周知活動を行っていて、1回のマラソンで周知活動を行うと1000万円くらい集まることもあります。

1型糖尿病はまだ克服できていない病気であり、600人の所員がいても正直言って「微力」を尽くすことしかできません。しかし「微力」であっても決して「無力」ではありません。私の父がかかったC型肝炎がそうであったように、1型糖尿病も将来必ず「そうだね。1型糖尿病が治らない時代があったんだね。」と振り返られるようにしていきますので、私たちの活動を見守っていただきたいです。

故山田和彦氏の姉の山田典子氏から

弟(山田和彦氏)は壊疽以外の全ての合併症を持ち、毎日のように低血糖に襲われ、また家族としても本当につらい毎日でした。愚痴ひとつ言わない弟が大きな期待を寄せていたのが、山中先生のiPS細胞でした。ただ、自分には間に合わないだろうからと、自分の遺産はこの病気の将来の根治に役立ててほしいと常々言っており、この度の山中先生へこの賞をお渡しできることで弟も本当に喜んでいることと思います。

患者(佃りあんさん)からのお祝いメッセージ

1年生の時に発症し、その後、毎日インスリン注射を頑張っています。いろいろ面倒だし、血糖値によっては体もきついので、正直、注射をしたくないこともあります。でも、山中教授がiPS細胞について一生懸命研究していると聞き、私も大変だけど山中教授に負けないくらい頑張ろうと思う。

もし病気が治ったら注射をしないで、何でも食べてみたいし、痛い思いや苦しい思いをしない毎日を送りたい。

私よりもっと苦しい思いをしているいろいろな病気を持つ子供たちもいます。山中教授の力でこのようなこどもたちが一人でも減るように研究を頑張ってください。私も勉強やスポーツを頑張ります。