東京大学にてA-port クラウドファンディングによる研究助成金(1,000万円)の贈呈式を実施しました。

2020年12月03日

左から東京大学医科学研究所 中内特任教授、日本IDDMネットワーク 井上理事長、東京大学医科学研究所 山口特任准教授

2020年12月3日(木)、朝日新聞社のクラウドファンディングサイト「A-port」を通じたご寄付を財源とし、東京大学医科学研究所の山口智之特任准教授へ研究助成金1,000万円の贈呈式を行いました。
Zoomを使用したオンライン贈呈式には、山口智之特任准教授と研究室のみなさん、そしてアメリカ・スタンフォード大学より山口特任准教授の所属研究室の教授である中内啓光特任教授にもご出席いただきました。
日本IDDMネットワークからは理事長の井上龍夫が出席し、オンラインにて目録贈呈等を行いました。

【助成研究について】
○研究課題名:マウス発生環境を利用したヒト膵臓作製
○研究代表者:山口 智之(東京大学医科学研究所 幹細胞研究センター幹細胞治療分野 特任准教授)
○助成額:1,000万円

【助成研究の内容】
私たちはこれまでにラットの体の中にマウスのiPS細胞由来の膵臓を作ることに成功し、そこから分離した膵島を糖尿病マウスに移植することで、一生涯免疫抑制剤なしで、血糖値を正常に保つことに成功しました。この助成研究ではこの方法を応用して「ヒトのiPS細胞をつかって、マウスやラットのなかにヒトの膵臓をつくる」こと目指します。
ヒトのiPS細胞はマウスやラットのiPS細胞と少し性格が異なり、異種動物体内で臓器に成長することが難しいと予想されます。私たちは最新の理化学機器でマウス体内のヒト細胞を追跡、解析し、どうすればヒトの細胞がマウスと共存して成長し、臓器をつくれるようになるのか、その条件を見つけ出します。この条件を見つけることがヒトの膵臓を作るうえで一番高いハードルであり、これさえクリアできれば、マウスやラットの体内にヒトの膵臓をつくることが実現すると考えます。
ヒトの膵臓をもつ動物は小児の1型糖尿病治療の為の膵島移植治療のみならず、糖尿病治療の為の新薬のスクリーニングや副作用の検査にも有用であることが期待されます。
▼研究概要の詳細はこちら
https://japan-iddm.net/wp-content/uploads/grant/report/202001_tokyo_yamaguchi.pdf

<日本IDDMネットワーク理事長 井上より>
今日はこのようなオンラインという場ですが、こういった形が功を奏し、日米をつなぎ贈呈式が開催できることも、とてもいい機会と捉えています。
今回の山口先生の研究は、異種の動物の体内を借りて、iPS細胞によって膵島を作り出すというものです。自らの細胞を使った再生治療という観点でも、非常に大きな期待を寄せています。

<東京大学医科学研究所 幹細胞研究センター幹細胞治療分野 中内啓光特任教授より>
この度は山口准教授の研究プロジェクトに非常に沢山の助成金をいただくことになり、日本IDDMネットワーク並びにご寄付いただいた多くの皆さまに感謝いたします。
我々が研究を進めていくうえで、患者・家族団体の支援というのは非常に重要です。井上理事長の働きかけで、文部科学省もついにガイドラインを変更し、人と動物のキメラを作ることによって人の臓器を作成するという我々の研究がようやく日本でも進められるようになりました。

<東京大学医科学研究所 幹細胞研究センター幹細胞治療分野 山口智之特任准教授より>
この度は非常に短期間で非常に多くの方々からクラウドファンディングでのご支援いただき、1000万円という大きな助成金をいただくことになりました。我々の研究にご支援をいただいた多くの皆さま、日本IDDMネットワークの皆さま、A-port関係者の皆さまに深く御礼申し上げます。
今回いただいた助成金は、ヒトの細胞とマウスの細胞が協調的に発生し、キメラを形成するために必要な条件を探す研究に活用させていただきます。条件が見つかったのちには、マウスの体内にヒトiPS細胞由来の膵臓を作ることを目指します。

 

 今回の研究助成金は、朝日新聞社のクラウドファンディングサイト「A-port」にて呼びかけた寄付金を財源としております。
  「子どもたちに”治る”希望を届ける ―iPS細胞から膵臓を作る世界注目のプロジェクト―」
  寄付募集期間:2020年3月30日~2020 年7月27日