医療器具が入手困難なら

災害時には医療器具の入手も困難になります。せっかくインスリンがあっても、注射針がなければ打つことはできません。もし、手持ちの針が少なければどうしたらいいでしょうか?

繰り返し同じ針を使う(4〜5回)

日頃の指導では注射針は毎回換えるように指導されていると思います。日常的にはもちろんそうすべきですが、災害時で手持ちの針の量が不足気味だったり次にいつ手に入るかわからない、という状況なら、同じ針を数回使い続けるしかありません。注射器(ペン型ペン型注入器)に針をつけたままにしておき、針にキャップをして汚れたり曲がったりしないように注意していれば、繰り返し使うことができます。4,5回使用すると針先が摩耗して刺すのが痛くなりますので、痛くなったら新しい針に交換しましょう。

ただし、同じ注射器(ペン型注入器)・注射針を使って、患者同士で回し打ちをするのは、血液からの感染症にかかる可能性があります。針はもちろんのこと、カートリッジの使い回しも同様です。

インスリンが足りない場合、知り合いの患者同士で譲り合って災害を乗り切る必要も出てくるかもしれません。あなたにインスリンの余裕があるならもちろん困った仲間には分けてあげてほしいと思いますが、あなたが既に使っているインスリンカートリッジを貸すのは厳禁です。注射をした時に、少量の血液がカートリッジの中に逆流します。使いかけのカートリッジを貸し借りすると、感染する可能性があります。

消毒用アルコールがないなら服の上から針を刺す(欧米での方法)

アルコールがなくなってしまったらどうしたらいいでしょうか?欧米でのインスリン自己注射の指導方法では、実はアルコール消毒を行っていません。つまり、アルコール消毒をしなくても、針の傷からバイ菌が入ったりする可能性はそれほど無いようです。アルコールがなければ清潔な水で代用してもかまいませんし、水が貴重で肌の洗浄に使えないなら、きれいな布などで肌を拭いてから打てば大丈夫です。

血糖測定できないなら だいたい」の血糖値を想像して打つ

血糖測定器やチップが無くなってしまうこともあるでしょう。そんな場合は自分の体と相談しながら、「大体このくらい」と想像しながら打つしかありません。日頃から体調や頭の重さと血糖値の関係を覚えておき、自分の体調を感じながら、少なめに打ってみてください。体調が改善しないようならまた少量追加する、という方法で打ってみましょう。

日本IDDMネットワーク 「1型糖尿病[IDDM]お役立ちマニュアル」PART 3 −災害対応編− より