食事が不規則なら・・・

被災地では安定した食事はなかなか望めません。1日全く食べられない、ということもあるでしょうし、食事が届いても量が毎回違う、次がいつ届くかわからない。手元に食事が届いても、余震で食事ができずに避難、という状況も考えられます。

基礎分泌のインスリン量は絶対必要 (1日必要量の60〜70% 子どもは50%)

仮に全く食事をとることができなくても、インスリンを打たずに済ますのは厳禁です。体内の糖をエネルギーに変えるためにはインスリンが不可欠で、インスリンを絶ってしまうと、最悪の場合ケトアシドーシスによる昏睡症状を起こしてしまいます。基礎分泌量に相当するインスリンは注射(注入)しましょう。その量は、通常一日に打っているインスリンの60〜70%(子どもの場合は50%)が目安ですが、具体的な量は主治医の先生と相談しておいてください。

いつ食事がとれるか分からない時は、 低血糖を避けるため血糖は高め(150〜200mg/dl)に保つつもりで

災害時であっても血糖値を日頃と同程度に保ちたい、という気持ちはわかりますが、こまめに血糖を測定してインスリンを注射(注入)しても、災害のストレスや不安定な食事、急な運動(労働)などのため、きっと日頃と同じような血糖管理はできないでしょうし、インスリンの打ち過ぎによる低血糖の危険もあります。災害時の血糖値は低血糖を避けるためにも、高めでかまわないと開き直ってください。合併症が気になるかもしれませんが、合併症は数日や数週間程度の時間で発症するものではなく、何年も悪いコントロールを続けた結果発症するものです。災害時にはそれほど気に病む必要はないと思います。日頃からきちんと血糖管理をしておくことで、災害時に多少無理なことをしても体が乗り越えられる力を蓄えることができます。

また、食事のタイミングがわからない時や余震が頻繁に起こっている時は、食べた量に合わせて食事の後にインスリンを打つ方が、低血糖の心配をしなくて済むでしょう。

血糖がさらに高くなったと感じた時に超速効型で抑える

運動(労働)やストレスなどのために体に変調を感じるほど高血糖になったと感じた時は、ノボラピッドやヒューマログといった超速効型を少量注射(注入)して血糖を下げる、モグラ叩きのような要領での血糖管理(病気の際のインスリン処方:シックデイルール)を行いましょう。

規則正しい食事ができるようになったら いつもの打ち方に戻す

ライフラインの復旧が始まり、規則正しい食事ができるようになったら、日頃の打ち方に戻して徐々に血糖を目標の値に近づけるようにしてください。ただし、災害前に比べて復旧作業など運動量が増えている可能性が高いので、少なめに打ちながら様子を見て戻していきましょう。

日本IDDMネットワーク 「1型糖尿病[IDDM]お役立ちマニュアル」PART 3 −災害対応編− より