医薬品を1ヵ月分持ち出すことができなかったら…

家屋の倒壊や外出先での被災など、運悪く1ヵ月分持ち出せなかった場合はどうすれば良いでしょうか?持ち出せたインスリン量によって考えておきましょう。

(1) 1週間以上程度は確保できている場合

それだけの医薬品を持ち出せたのなら2,3日は全く問題はないので、今すぐ焦る必要はありません。ほとんどの大規模災害被災地では、3日程度で医療機関は初期の救急救命の状況(外傷患者で手一杯な段階)を脱し、慢性疾患患者、つまりみなさんへの対応もできるようになってきます。また、3日目までには被災地の外から支援が入り始めます。3日程度は手持ちのインスリンで過ごし、主治医の病院に行けるか?連絡がとれるか?状況を確認してください。連絡がとれないようなら、糖尿病外来を行っている近所の病院や日頃通院している病院、なじみの薬局などへの連絡を試して、インスリンが入手できる方法を確保しておき、手持ちのインスリンが3日を切ったら入手するようにしてください。


(2) 3日分程度は確保できている場合

どうすればインスリンを入手できるか、早急に確認しておくことが大切です。主治医のいる病院やかかりつけ薬局など、日頃医薬品を確保しているところに連絡がとれるか、確認してみましょう。もし連絡がとれない、または行くことができない状況なら、近くの同じ病気の仲間に連絡を試み、もし余分があるなら少し譲ってもらいましょう。その他、近所の病院、薬局などにお薬手帳、処方せんのコピーを持って行って病気のことと薬の手持ち量を伝え、インスリンを手配してもらいましょう。今すぐその薬局にインスリンはなくとも、近くの薬局や薬問屋には在庫があると思いますので、入手できないかお願いしてみましょう。近くに病院や薬局がない場合、避難所で開設される救護所(又は巡回で訪れる医療救護班)に依頼しましょう。そのような専門職の方にお願いできない場合は、避難所の管理を担当している行政職員や自治会・自主防災組織の方にお願いして、保健所に状況を伝えてもらいましょう。


(3) 全く持ち出せなかった場合

処方せんのコピーやお薬手帳など、自分の病気について説明できる資料を持って、インスリンを確保することができないか、安全や自分の体調に注意して、可能ならばそれらの場所をたずねてみましょう。

その際、急激に体を動かして低血糖を起こさないように気をつけてください。できるだけ家族や病気のことを理解している方に付き添ってもらい行動するようにしましょう。


(4) 低血糖昏睡・高血糖昏睡をおこしている状況

できるだけ速やかに医療機関に連れて行ってもらう必要があります。近くの方は、周りの方に手を貸してもらうよう、大声で呼びかけてください。その際、「誰か助けてください」と呼びかけるのではなく、「あなた助けてください」と近くにいる人を指さしてお願いしましょう。そうすることで支援してくれる可能性が高くなります(名指し効果といいます)。地域の自主防災組織などでは高齢者や救急患者搬送用にリアカーを備えているところもあります。

連れて行く医療機関は内科が良いと思われますが、とりあえず近くの医療機関であればどこでもかまいません。低血糖昏睡、又は高血糖昏睡を起こしていることを伝えてもらうためにも、IDカードなどを人目につきやすい所に携帯しておくことが大切です。

日本IDDMネットワーク 「1型糖尿病[IDDM]お役立ちマニュアル」PART 3 −災害対応編− より