〜難病被災者支援の手引き〜1型糖尿病[IDDM]編
○まず知ってほしいこと○
災害時はみんな大変な思いをしますが、病気や障害を持った方の心細さは健常な方とは比較にならないほど大きいものです。パニックになって必要な情報を正確に伝えることができなくなり、大声を出して詰め寄ったりするかもしれません。
でも、そんな態度は、『心の底から発しているSOSの裏返し』なのです。
Q.1型糖尿病(IDDM)とは?
A.毎日数回のインスリン注射を生涯にわたって必要とする病気です。
- 糖尿病という名前は一緒ですが、発症過程も治療に関する考え方も2型糖尿病(生活習慣病)とは異なります。
- 年間発症確率は10万人あたり1〜2人で、小児期発症が多いことから「小児糖尿病」と言われることもあります。
- 1型糖尿病(IDDM)患者は、インスリンさえ注射していれば、一見、病気のようには見えません(災害時要援護者には見えません)。でも、インスリンという薬を注射しないと数日で生命が危険になる病気です。
- 注射は幼児を除けば患者自身が行います。自分で注射をするのを見ると驚かれるかもしれませんが、1型糖尿病(IDDM)患者では普通のことなのです。
- インスリンによる副作用(効きすぎ)で血糖が低下して発作(ひどい場合は昏睡)を起こすことがあります。
- また、一般的な食事を規則的にとることが体調管理に重要です。
こんな相談が来たらどうしますか?
Q.私(子供)は、1型糖尿病(IDDM)で薬(インスリン)があと1日分しかありません。薬を手に入れたいのですが。
A.※インスリンは医師の処方せんが必要な薬で、一般の薬局には置いていないことが多いです。
- まず、主治医への連絡をすすめてください。かかりつけ薬局への相談も有効です。
- 主治医にもかかりつけ薬局にも連絡が取れないときは、近くの医療機関または医療救護班を紹介してください。そこで処方せんを書いてもらい、薬が入手できる場所を尋ねるように言ってください。
- それでも無理な場合は、市町村(または県)の災害対策本部へ連絡してください。
Q.私は佐賀から旅行に来て被災しました。主治医と連絡が取れません。何とかして薬を手に入れたいのですが。
A.
- 近くの医療機関または医療救護班を紹介してください。そこで処方せんを書いてもらい、薬が入手できる場所を尋ねるように言ってください。
- 無理な場合は、市町村(または県)の災害対策本部へ連絡してください。
Q.私(子供)は1型糖尿病(IDDM)です。低血糖(血糖値が下がっている)のようです。甘いものが欲しいのですが。
A.※低血糖の時は、手のふるえ、発汗、空腹、無口、おしゃべり等、いろいろな症状がでます。ひどくなると、けいれんや昏睡に至ることがあります。
- こんな時は、甘いもの(ブドウ糖や砂糖を含む食べ物、飲み物)をあげてください。
例:砂糖(目安は20グラム)※コーヒーのスティックシュガー、ガムシロップなど ノンカロリーやカロリーオフは不可
例:ジュース ※果汁の少ないオレンジジュースなど 果汁100%、ノンカロリー、カロリーオフは不可
例:クッキー、ラムネなどのお菓子
- 急に倒れて自分で口に入れられない時は、ほっぺたの裏に砂糖をぬってください。(噛まれないように注意してください)
- ただし意識を失った場合は、救急搬送が必要です。その際は、医療従事者に低血糖で倒れた可能性があることを伝えてください。
Q.注射を打ちたいのですが、場所を貸していただけませんか。
A.医務室でなくとも、人目につかない場所であれば、どこでも良いので提供してあげてください。
Q.1型糖尿病(IDDM)ですが、私でお役に立つことはありませんか。
A.見た目は健康そうですが、体を動かしすぎると低血糖発作を起こすので、体に無理のない範囲でできることをしてもらいましょう。
例:高齢者の話し相手、患者の相談、資料の整理、簡単な掃除や整理
発行 非営利活動法人日本IDDMネットワーク
この手引きは、NPOからの協働事業提案により、災害時の難病患者支援プロジェクト(三重県防災ボランティアコーディネーター養成協議会、災害ボランティアネットワーク鈴鹿、日本IDDMネットワーク)が三重県と協働で作成しました。